ギャロ単独公演『SHIBUYA BLACK CIRCUS-DIAVOLO-』ライブレポート
2017年6月7日、渋谷CHELSEA HOTELにてギャロの単独公演『SHIBUYA BLACK CIRCUS-DIAVOLO-』が開催された。開演前、待ち遠しそうに黒い雌鶏たち(ファンの総称)が銀の匙で皿をカチカチと打ち鳴らしていた。
やがて、ランタンを手にしたメンバーが登場。「腹減ったなぁ!」というジョジョ(Vo.)のシャウトから『夢魔-INCUBUS-』へ。他のメンバーによるコーラスが、妖婉さの中に勇ましさを感じられる。この日は動画撮影可の曲が盛り込まれた。ジョジョが「盗撮可」と筆で書かれた半紙をかかげると、スマホで撮影を始める黒い雌鶏たち。その後のMCでジョジョはこの動画撮影可について「初の試みだからどうしたらいいのか分からなかったけど新鮮でした。ちゃんとビューティープラス(画像編集アプリ)で撮って修正した?」と笑いを誘ったのだった。
怪しげでありつつ心を鷲掴みにされるレトロなメロディに、フロア全体がギャロの世界観に染め上げられていく。体内にズシズシと響くベースラインで始まったのは『死神-THANATOS-』。クラっと目眩を覚るようなアダルトさに身が悶える。「踊るよ!」そうジョジョが声をかけると黒い雌鶏たちはゆらゆらと怪しく舞った。そしてサビではモッシュでぐちゃぐちゃに。何でもアリの夜会に舞い込んでしまったようだ。
コーラスやツインボーカルの曲が多いギャロ。ジョジョのカラッとしつつもエロチシズムを含んだ声と、カエデ(Dr.)の透明感のある高音ボイスが絡まり合って溶けていく様は一瞬にして鼓膜がとろけてしまいそうだ。
「恋の呪文を唱えましょう」 ジョジョの呼びかけで『夢魔-SUCCUBUS-』へ。ゆったりとしたコーラスのイントロから一転、Aメロで高音のシャウトとデスボイスを交互に使い分けるジョジョ。フロアはさらにヒートアップし、ジョジョはフロアに降りてモッシュに参加。動画撮影可能な曲であったため、向けられたスマホにポーズを決めていた。一斉にスマホを掲げるフロアは、普段のライブでは見られない少し異様な光景であった。
激しいナンバーが続き、このまま突っ走っていくのかと思いきや、『魔王-贖罪-』では哀愁漂うギターの旋律に胸がしめつけられそうになった。続いて『黒鶏式葬送曲第壱番-ドウベ-』では、スコップを肩にかついで目をむき、ギラつくルージュがたっぷり塗られた唇でねっとりと歌い上げるジョジョ。ワジョウ(Gt.)はクルクルと回るコミカルな表情で飛び跳ねる姿を見せてくれた。そして、ノヴ(Gt.)のうねるギターとアンディの低音が特徴的な『魔王-屠星-』という完璧な流れだ。フロアは怪しさと激しさが織りなす楽曲の渦に飲まれていった。
「まだまだ気合い足りねーだろ!」 ジョジョの煽りに黒い雌鶏たちが答える。『淫魔-BELPHEGOR-』のメロディアスなイントロで黒い雌鶏たちが一斉に匙で皿を叩く音が響く。「札束が舞い散る」という歌詞の通り、熱気あふれるフロアに札束が舞うような錯覚を覚えそうだ。そして、ホラー映画に出てきそうな古い洋館がイメージされる『魔王-闇詩-』へと続く。こちらもギャロの香りがプンプンだ。ライブもいよいよ後半戦。なんと、あまりの激しさに衣装のパンツが破れてしまったジョジョ。それも気にせずに、さらに激しさを増すパフォーマンスを繰り広げていった。
『蚯蚓』ではジョジョが「力の限り思いっきり暴れてください、いいか!?」と、左右からぶつかり合うモッシュに誘導。しかし、それだけでは飽き足らなかったのか、自らフロアに降り、ジョジョを中心とするサークルモッシュへと発展した。ジョジョのやんちゃな笑みに黒い雌鶏たちもつられて笑顔になる。
「みんなの前で演奏できるのはとても幸せだと思うので、これからもよろしく」「今日も生きていて良かったなと思います。ここにいる全員のおかげです。ありがとう」MCのたびにそう、何度も感謝を述べるジョジョの姿が印象的だった。
また、『神風型駆逐艦・闇風』の最中に突然始まったジョジョの誕生日のお祝い。ノヴがバースデーソングをギターで奏で、フロアからも歌声が響く。突然の出来事に「油断してました」と、はにかむジョジョ。そこに『神風型駆逐艦・闇風』の歌詞のごとく「お食事の時間です♪」と、届いたのはサンドイッチとテキーラ。キュウリが嫌いだというジョジョのため、キュウリの入っていないサンドイッチだそう。
「お食事の時間です♪」のコールに合わせ、ジョジョはテキーラを一気した。飲み干すと他のメンバーと黒い雌鶏たちから暖かい拍手と声援が沸き起こった。
気を取り直し、再度『神風型駆逐艦・闇風』の続きへ。カエデがギターを弾き始めてアンディがドラムを叩いていたり、ワジョウがフロアに降りてきてモッシュで圧し潰されそうになったりと、フロアはお祭り騒ぎだ。ワジョウの小柄な体はあっという間にはモッシュに巻き込まれ「苦しいです」と言いながらも、とてもうれしそうだ。ステージとフロアとの間に強固な一体感を感じられた。
あっという間にラスト。明るいメロディラインの『禁句』は短い曲ではあるが、ステージもフロアも爽快感に包まれた。「愛してます、ありがとう!」ジョジョは最後まで感謝の言葉を述べ続けた。
END SEの『嬲魔-BELIAL-』が流れる中、カエデは「我ながら最高のバンドだと思います!」と、清々しい笑顔で堂々と宣言。ジョジョは「最近、目当てのバンドが終わったら帰る人いっぱいいるじゃん? そういうの良くないと思うので、みんなは目当てのバンドが終わっても見て帰ってくださいね。偽善者とかではなく、このシーンを変えていきたいと思ってるから」 その人情味に満ちた言葉に黒い雌鶏たちも素直に返事をする。
むせ返るほどに濃いギャロの世界観で埋め尽くされ、圧倒された空間だった。そして、ライブが終盤に近付くにつれ、ギャロと黒い雌鶏たちの結束力を魅せられた2時間でもあった。古き良きヴィジュアル系の姿、それがギャロのステージには確かにある。
PHOTO:TAMA
TEXT:姫野ケイ
【セットリスト】
1.夢魔-INCUBUS-
2.大日本黒鶏主義者聯盟行進曲嬰ハ短調
3.死神-THANATOS-
4.東京破廉恥劇場-ヱデン-
5.凶魔-BEHEMOTH-
6.殲魔-ZIZ-
7.夢魔-SUCCUBUS-
-MC-
8.獄魔-ASTAROTH-
9.魔王-贖罪-
10.黒鶏式葬送曲第壱番-ドウベ-
11.魔王-屠星-
12.姦魔-LEVIATHAN-
13.嬲魔-BELIAL-
14.眠神-HYPNOS-
15.淫魔-BELPHEGOR-
16.魔王-闇詩-
-MC-
17.独奏
18.蚯蚓
19.葬魔-LUCIFER-
20.畸形
21.夢葬
22.神風型駆逐艦・闇風
23.禁句