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「KERBEROS」インタビュー長篇

――「KERBEROS」は、どんな構想のもとに作られたシングルでしょう?

ジョジョ:これは常日頃そうですけど、リリースする度に前の作品を超えたいという想いがあるんです。楽曲もそうだし、ヴィジュアル面もそうだし、全ての面で前作を超える作品を作りたい。今回もスタートは、そこでしたね。だから、こういう方向性でいこうということは決めずに、それぞれが曲を持ち寄って、その中から3曲選びました。

カエデ:ただ、最初は各々曲作りをしていたんですけど、動き出したのが早かったのはジョジョでしたね。リード曲の「KERBEROS」はジョジョとワジョウの共作になって、そこでジョジョの中にはシングルに対して思うところがあったんだと思います。

ワジョウ:「KERBEROS」を作った時はジョジョが僕の家に来て、クラシカル・ロックをモチーフにした曲を作りたいと言ったんです。つまり、その時点でジョジョの中にはヴィジョンがあったんですよね。それで、ジョジョから曲のイメージをいろいろ聞いて、クラシック・ロックを聴いたりもしつつ「KERBEROS」を形にしていきました。

ジョジョ:「KERBEROS」の基盤になっているものは聴く人が聴けばすぐに分かると思うけど、我々がこういう音楽をやっても絶対に誰かと同じようなものにはならないという自信があったんです。自分のメロディーもそうだし、ギャロだからできることを詰め込むことができるし、歌詞の世界観もそうだし。それに、本当は10分くらいある壮大な曲にする予定だったんですよ。でも、途中で、「ちょっと長くねぇ?」という話になりました(笑)。この曲はちょっと不思議な世界の導入部から始まって、スピード・メタルっぽいテイストに変わるじゃないですか。そこももうちょっと時間を掛けてから展開するつもりだったけど、前奏は短くしようということになった。最初は、前奏は2分くらいかなと思っていたんです。

一同:えっ? それは長いって(笑)。観ている側も、やっている側もツラくなる(笑)。

ジョジョ:前奏はSEとして使えば良いと思っていたんですよ。僕らの曲で「魔王胎動」という曲があるんですけど、それはライブの時にSEとして使っていたから。それにしてもちょっと無理があるかなと思って楽曲の構成……いろんなシーンが出てきて、どんどん展開していくという流れは残しつつ、コンパクトに纏めました。そこも含めて、すごく良いところに落とし込めたなという印象がありますね。

――同感です。「KERBEROS」の歌詞についても話していただけますか。

ジョジョ:今回は、僕のキャリアの中で一番残酷な歌詞にしたいなというのがスタートとしてあったんです。いつも通り残酷なものときれいなものの対比を活かしつつ、残酷さを突き詰めてみようと。でも、結果きれいに収まっちゃったな…みたいな。

――えっ? ……そうですか?

ジョジョ:僕以外の人間が見たら、すごく凄惨な歌詞だなと思うかもしれないけど、自分的にはもうちょっと書けたのに…というのがあるんです。この曲で初めてギャロを知った人とかは、何かの比喩として“人食”を使っているのかなと思うかもしれないけど、そうではなくて。僕の中にあるイメージを、ストレートに描きました。人食をテーマにした歌詞は音に乗った時の攻撃力が高いと思うけど、「KERBEROS」は普通に読み物として見てもクオリティーは高いかなと思う。そういう意味では、納得はしています。

――以前ジョジョさんと話をした時に、陰惨な歌詞であれ、残酷な歌詞であれ、愛を歌っていると話されていました。その辺りは、どうでしょう?

ジョジョ:「KERBEROS」も、愛はあります。基本は、やっぱり愛情かなという。僕はギャロが始まって3枚目の音源を出した時から、もう全部ラブソングだと思って書いているので。

――リスナーの方には、そこをぜひ分かって欲しいと思います。では、「KERBEROS」のレコーディングはいかがでしたか?

カエデ:ドラムはデモの段階で、高速2バスだったり、メタリックなフィルだったりが希望として出ていて。そういうプレイは今までしたことがなかったし、そういうドラムを叩くことに最初は抵抗があった。でも、曲調としてドラムはこうあるべきだということは分かるので、みんなを信頼して、“俺がこういうドラムを叩いた結果、どうなっても知らんぞ”くらいの気持ちで録りに臨みました。技術的な面では叩けるけど、これを叩いた時に自分っぽくなるのかなという疑問を感じる部分もあったんですよ。でも、録ったテイクを聴いて、自分らしさは出ているし、良いプレイができたんじゃないかなと思いました。

――パワフル&テクニカルなドラムで、すごくカッコいいです。それに、ドラムの音がカエデさんらしいというのも良いですね。

カエデ:それは言いました。メタリックな曲だからといってバチバチのキックで、重いスネアで…みたいにするのは、あまりにも安易だなと思って。それに、僕はずっとトリガー(註:ドラムの音を人工的に加工するツール)を使わずに来ているので、そこはいつも通りこだわりました。「KERBEROS」は、こういうドラムも叩けるんだよということが分かってもらえれば良いかなと思います。ただ、ライブの時に、コーラスをしながら2バスを踏むことになるんですよ。そういうことは伝わりにくいけど、僕の中で特筆すべきは歌っているというところなんですよね。

アンディ:「KERBEROS」はデモを聴いた時に、こういうタイプの曲はドラムとギターとボーカルがちゃんとしていれば成立するから、ベースは良いかなと思いました(笑)。だから、シンプルなベースになっていて、特に話すことはないです。

――そんなことはないです。Bメロやサビなどでは動きのあるベースを弾かれていますし、高速ビートの中でウネッていることもポイントです。

アンディ:動くところは動こうと思ってフレーズを考えたけど、ウネりということは意識しなかったですね。だから、それは自然な結果です。というか、正直なところ俺は、こういう音楽性は通ってきていないんですよ。当然耳にしたことはあるけど、自分でやったことはなかった。だから、俺のアプローチは正しいのか、間違っているのかがよく分からないんです。新しいことに挑戦するというところで刺激を受けたし、弾くのが楽しい曲ではありますけど。

――音楽の答えは一つではないですし、グルーブ面で大きな役割を果たしていると思います。

アンディ:本当ですか? そう感じてもらえたなら良かったです。それに、この曲を今後のライブで演奏していく中で見えてくるものが、きっとあると思うんですよ。なので、それを楽しみにしています。

ノヴ:僕は「KERBEROS」のデモを聴いて、“来たっ!”と思いました。僕は元々X JAPANのHIDEさんが好きでギターを始めたので、こういう曲は好きなんです。それに、メタル系のコピーもいっぱいしていたし。でも、そういう路線のオリジナルをやるのは初めてだったので、あの時代を思い出しながらギターのアプローチを考えていきました。ギャロではワジョウさんと僕の役割分担や棲み分けみたいなものが、あまり決まっていないんです。僕が自分のパートを考えてワジョウさんに投げたら、それに対してワジョウさんがギターをつけて、それを聴いてアレンジして、また投げて…というやり取りを重ねていく。そういう構築の仕方なので、この曲も1人がバッキングに徹して、もう1人がリードという形ではなくて。2人のギターが有機的に作用する形になっています。

ワジョウ:カエデやアンディと同じように、僕もこの手の音楽はちゃんと通ってはいないんです。だから、相当悩みながらギターを考えました。メタルに寄せるんじゃなくて、自分らしさを出したいという気持ちがあったんですよね。だから、僕のやり過ぎるくらいやってしまってメンバーに煙たがれるところとか、ギターを重ねずに1本で通したがるところとかは今回も活かしました(笑)。それに、メタリックな曲だけど、シングルコイルPU(註:シャープな音が出るタイプ)のギターを使って音圧よりもエッジを出すようにしたというのもあって。結果的に、面白い感じになっているんじゃないかなと思います。

――メタリックなノヴさんと尖ったワジョウさんという組み合わせが絶妙です。それに、2人で順番にソロを弾いている間奏も聴きどころです。

ワジョウ:ギター・ソロは僕が先で、後がノヴです。僕のソロはデモを作ってみんなに投げる時になんとなく弾いたテイクが良かったので、それをそのまま活かした感じです。

ノヴ:僕はワジョウさんのソロを聴いて、こういう感じで来たなら自分も攻めないといけないと思って。テクニカルで、かつエモさもあるというソロを弾きました。2人で順番にソロ弾いて、最後はハモるという王道的な構成になっています。

ワジョウ:ベタといえばベタですよね(笑)。でも、そこは押さえないといけないなと思って、敢えてやることにしたんです。

カエデ:歌の合間のギターのハモリ・フレーズとかも、押さえておきたいポイントだよね(笑)。

ワジョウ&ノヴ:そうそう(笑)。

ジョジョ:「KERBEROS」は、それぞれがツボを押さえたうえで個性を発揮することで面白いものになったというのはある気がしますね。歌に関しては、僕もメタルは通っていないんですよ。たぶん、メンバーの中でも一番通ってないと思う。僕はパンクスだったので、メタルは敵視していたんです。“こういうハイトーンって、なんなの?”と思っていたし、楽器にしても“そこまでのテクニックとか必要ないだろう”と思っていた。でも、バンドを長くやってくる中で、やったことがないのに批判するのはおかしいよなという気持ちになってきて。それに、レジェンドと呼ばれている人達と会う機会とかもあって、そうすると先輩達でさえ、いろんな悩みを抱えて音楽をやっていたりするんですよね。それを知って、一層やらずにディスるのは違うなと思うようになったんです。

――それで、挑戦されたんですね。バンドとして新しい方向性を打ち出した時に、サウンドが変わってもボーカルはいつも通りということも多い気がします。でも、「KERBEROS」ではメタル直系のハイトーンなどを披露されていて驚きました。

ジョジョ:デビュー当時と今では全然スタイルの違うボーカリストって、いるじゃないですか。そういう人は、キャリアを重ねるうちに自然と変わったみたいなことを言うけど、絶対にそうではなくて、意識的に変えていったんですよ。それは、同じボーカルだから分かる。そういうところで、今後戦っていくうえで自分の引き出しを増やすのは良いかなと思って、今回新しいことに挑戦しました。でも、ハイトーンも含めてそんなに苦労することもなく、別にいけるじゃん…みたいな感じでしたね。「KERBEROS」は出だしで一番低い音域で歌っていて、最後にすごいハイトーンが出てくるという流れで、1曲の中での振り幅がすごく広いんですよ。そうやって下から上まで出ているというのが、今の自分の中では美しいものなんです。だから、これはこれで良いかなと思っています。

――「KERBEROS」は、皆さんの演奏力の高さを改めて示した1曲ともいえますね。

ジョジョ:「KERBEROS」は、楽器をやっている人のカッコ良さも提示したかったんです。楽器のカッコ良さはいろいろあるけど、分かりやすいカッコ良さを見せたかった。俺達のことを知っているお客さんがまだ見たことのない各パートの魅力が伝わると良いなと思って、それぞれが目立つ部分を入れ込んだというのもありますね。まだリリースする前だから予測になってしまうけど、「KERBEROS」を作ったことで、お客さんの反応が違ってくるんじゃないかなという気がするんですよ。そういう意味でも、良い挑戦になったんじゃないかなと思います。

――新たなギャロの魅力を、早くファンの方々に味わって欲しいです。では、続いてカップリングについて話しましょう。

カエデ:2曲目の「蛔蟲」も、今までのギャロにはあまりなかったテイストの曲です。この曲は方向性のテーマみたいなものをジョジョから貰っていて、そのモチーフになる世界観みたいなものが自分の中にあって。そこに自分らしさも入れて曲を作ったらどうなるんだろうと思って、作曲に取り掛かりました。ジョジョから言われたテーマというのは、僕の中では退廃感があって、モノクロームなイメージだったんですね。そこから広げていって形にしました。

――翳りを帯びた世界を押し出しつつ中間でレゲェっぽくなって、しかも徐々にテンポアップするというアレンジも秀逸です。

カエデ:あのパートは、ジョジョのテーマからは外れているんです。僕はシステム・オブ・ア・ダウンというバンドが好きで、そういうテイストを入れたいなと思ったんですよね。曲中の良いフックになるし、異質なものを入れることで、より独自のものになるというのもあったから。ただ、一度スローになって徐々にテンポアップするとなると、クリックは使えないじゃないですか。なので、レコーディングでは、そこだけクリックを切って録りました。そんな風に、整理されていないものがポロッと出てくることも、この曲の面白さの一つになっているかなと思います。

ジョジョ:「蛔蟲」の歌詞はすごく平たく言うと、ストーカー、変質者を描いています。今回の3曲を並べると歌詞も、歌も一番らしいかなという気がしますね。“好きでしょ、こういうの”みたいな(笑)。僕のベーシックになっている歌い方はクラシカルなヴィジュアル系に通じるところがあって、この曲はそれを押し出した。だから、“分かりやすいジョジョ感”みたいな歌になっていると思います。

アンディ:「蛔蟲」のベースは、さっき話が出たジョジョの中にあるテーマに沿った感じにして欲しいと言われて。それを踏まえたうえで、自分らしいベースというところに落とし込みました。ずっと動いているベースになっているけど、フレーズがどんどん降ってきたので、特に苦労はしなかったです。

――やりますね。Bメロ/Cメロのスタッカートやメロディーの合間を縫うサビのフレージングなど、随所でセンスの良さを感じさせます。

アンディ:ありがとうございます。スタッカートは自然と出てきたけど、サビはちょっと意識しましたね。歌の合間に、良い感じのフレーズをちょっと入れ込んでやろうと。今回の3曲の中でベースのプレイ的には一番好きな感じなので、「蛔蟲」はベースにも耳を傾けてもらえると嬉しいです。

ノヴ:この曲は自分が好きな感じのフレーズを沢山入れることができました。僕は“間”を活かしたり、拍の裏から入ってきたりするフレーズ好きで、そういうものを上手く使えたんじゃないかなと思います。あと、Aメロはワジョウさんが裏拍を出しているのに対して僕は頭打ちでコードを鳴らしていて、2本のギターで8分(音符)を出す形になっているんですよ。そこはワジョウさんから先にフレーズが来て、裏を出しているのを聴いて、自分は頭打ちにしたら面白い感じになるんじゃないかなと思ったんです。1本のギターで8分弾きをした時にはでないウネりが出ていて、気に入っています。

――ノヴさんはCメロで、すごく響きの良いコードを鳴らされていますね。

ノヴ:デモを聴いた時に、ああいうコード感が頭の中で鳴ったんです。それを活かしたくてコードの構成音を拾っていって、左手のポジショニングとかも考えて、今のコードに落ち着きました。そういうところでも自分らしさが出せたかなと思いますね。

ワジョウ:この曲も作曲者のカエデからイメージが“ガチッ”と来ていて、それが僕の好きなところだったので、崩すのが大変でした。好きなだけに、最初はモロなフレーズを入れてしまって(笑)。それだと、ただのコピーになってしまうので、そこから自分のカラーに持っていったんです。苦労したけど、結果ちゃんと自分なりのものにはできたかなと思います。

カエデ:ドラムに関しては、僕は自分で曲を作る時はドラムのことは全く考えないんですよ。自分が叩くことを想定しないで、客観的な視点で楽曲が求めているドラムを入れる。それで、スタジオに入って叩いた時に、“ああ、こういう感じか”ということを知るという。この曲もそれは同じで、実際に叩いて、忙しい曲だなと思いました(笑)。

――Aメロのドラムは、かなり凝ったビート・パターンになっていませんか?

カエデ:いや、そうでもないです。“ドッタッ・ドッタッ”と“ドッタッ・ドコタッ”の2パターンが入っているだけなので。そこにベースとかギターが被さってくることで、複雑なことをしているように聴こえるんですよ。そういう“パズル感”みたいなものが僕は結構好きで、よく使いますね。

――Aメロの混沌とした雰囲気から“パーン!”と疾走するBメロへの移り方も気持ち良いです。シングルの3曲目はアンディさんが書かれた「神鯨型潜水艦・黒鯨」です。

アンディ:これは、元々は僕とジョジョが前にやっていたバンドの曲です。ジョジョさんがあの曲をやりたということで、持ってきました。だから、この曲は古いですね。作ったのは9年くらい前だっけ?

ジョジョ:原曲は12年くらい前。だから、もう10年選手だよ(笑)。

――でも、古びた印象はなくて、色褪せない魅力を持った楽曲だということが分かります。

アンディ:そうですね。今回録るにあたって、ちょっとリ・アレンジしましたけど。昔のバージョンを聴いたら、いくつか手直ししたいところが出てきたんですよ。ただ、パソコンが無くなってしまっていたので、iPhoneでガレージバンド(註:作曲用ソフト)を使ってアレンジし直しました(笑)。

ジョジョ:それに、歌詞も書き替えました。今回の3曲の中で、この曲の歌詞が一番時間が掛かりましたね。何年か前に出した「INCUBUS」(2015.5.27)というシングルに入ってる「神風型駆逐艦・闇風」という曲も前にやっていたバンドがルーツになっている曲で、ギャロのシングルに入れるにあたって歌詞を書き替えたんです。アンディと前にやっていたバンドは海賊がモチーフで、今ここでパイレーツ感を出すのもな…というのがあったから。それで、大日本帝国海軍と海賊と、ホラーを混ぜ込んで歌詞を書いたんですよ。この曲も、その流れを汲んで歌詞を書くことにしたんです。元々鯨について歌った曲だったので、“鯨=潜水艦”だなと思って。潜水艦の中にいる乗務員が亡霊とかゾンビとかだったら、ギャロのイメージに合うなというところから入っていきました。そこまでは良かったけど、この曲は歌詞の量が少ないんですよ。だから、自分の中にあるイメージを凝縮するのが結構大変でしたね。

――でも、語り切らないことで、聴き手のイマジネーションが広がる歌詞になっていると思います。

ジョジョ:そうかもしれない。そういう意味ではもっとシンプルでも良かったかなという気もするけど、それだとギャロのファンの人は物足りなさを感じるだろうというのがあって。だから、バランスは上手く取れたかなと思います。

カエデ:「神鯨型潜水艦・黒鯨」は今回の他の2曲に比べて“これぞギャロ”というか、こういうのがあるからギャロだよねという武器を出してきた感覚があって。バンドとして得意としている方向性なので、ドラムも楽しかったです。この曲のドラムは、多分メロコアなのかなという気がしますね。

――たしかに。それに、サビのスネアロールも良いフックになっています。

カエデ:ジョジョが結構スネアロールが好きなんですよ(笑)。

ジョジョ:うん、好き(笑)。

アンディ:ロールはジェスチャーしやすいから、うるさい中でもカエデに伝わるしね(笑)。

ジョジョ:そうそう(笑)。

アンディ:あと、ジョジョは頭打ちも多い(笑)。この曲のベースは、ほぼほぼ前の時と同じです。今回サビが新たについたけど、サビはユニゾン・リフを弾いているだけなんですよね。だから、この曲はすごくスムーズだったし、楽しい感じになって良かったかなと思います。ベースのフレージングでこだわったのは、イントロとかに出てくるウォーキングっぽいフレーズです。ウォーキング・パターンをそのまま弾くんじゃなくて、フンワリさせるというか。ウォーキングを弾いてしまうとちょっと泥臭くなる気がしたので、ちょうど良いかなというところに落とし込みました。

ノヴ:この曲の僕のパートはユニゾンしたり、ボトムを支えたえりという感じで、シンプルなんですね。だから、何か面白いことをしたいなと思っていたんです。そうしたらライターがあったので、ライターでボトルネックをやってみようかなと思って。それが良かったので、活かすことにしました。なので、この曲はライターでボトルネックをしています(笑)。

ワジョウ:僕は、リスナーに印象を残すという意味ではユニゾンが一番強いと思っているんですよ。だから、すぐにユニゾンに持っていこうとする傾向があって、この曲はそれが前面に出ていますね。ユニゾンしつつ要所要所にフレーズを入れて…というアプローチを採りました。2番のAメロでカッティングをしたり、Bメロではアルペジオを弾いたりしていて、効果的な色づけができたかなと思います。

――ノヴさんは後から加入されたメンバーですので、ワジョウさんがリード・ギターを担当して、ノヴさんにはバッキングに徹してもらうというのも“あり”だと思うんですね。でも、2人の個性を活かしているのが、すごく良いなと思います。

ワジョウ:僕は、欲を言えば最初からケツまでコード弾きだけしていたいくらいの感じなんですよ。だけど、泣く泣く手を加えているという(笑)。だから、ノヴがいろいろやるのは大歓迎です。なんなら、何かやってくれと言いますから(笑)。

ノヴ:ワジョウさんがそういうスタンスなので、僕も楽しくやらせてもらっています。それに、こう言っていますけど、ワジョウさんは意外と前に出てくるフレーズを出してきたりするので(笑)。そういう時は自分は下がるにようにするし、そのことに抵抗はない。だから、ギャロのツインギターは良い感じで機能しているなと思いますね。それに、僕とワジョウさんは、付き合い自体は長いんです。

ワジョウ:そう。一緒にホルモンを食べたりはしているので(笑)。意志の疎通は取れていて、ギターのアプローチについて密に話し合ったりしなくても、上手く収まるんです。お互いに、あまり主張しないのが良かったんでしょうね。

ジョジョ:2人のアンサンブルは、すごく良いなと思うよ。「神鯨型潜水艦・黒鯨」の歌は、あまりがならないようにしました。パンキッシュになり過ぎるのは嫌だったから。ジョジョが歌っているよという風にしたかったので、“ガッ!”といこうと思えばいけるけど、それは違うなと思って。あと、この曲は自分の歌というよりもコーラスワークで色づけしていくのが良いかなというのがありましたね。ちょっとふざけた感じのコーラスはギャロの個性の一つで、他のバンドでは聴けないんじゃないかなというのがあって。なので、いつも通りしっかり考えて、ふざけた感じのコーラスを真面目にやりました。

――今回のシングルは“リード曲+カップリング”というイメージではなくて、必聴といえる3曲が揃いましたね。「KERBEROS」のリリースに加えて、3月から4月にかけて行われるギャロの主宰ツアー【GALLOLUDE N°1】も楽しみです。

カエデ:【GALLOLUDE N°1】は黒百合と影というバンドとダブル・ヘッドライナーという形で、あとは僕のこだわりとして、なるべく地元のバンドと競演するようにしました。東京のバンドだけで行く良さもあるよ。そこには遠征するお客さんも居てくれて、もちろんそれは嬉しいことだけど、蓋を開けたら「だったら、東京でやれよ」という結果に陥ることもあるんですよ。もちろん力不足もあるけど。それに、場所によっては盛り上がっていないという話も聞くので、活性化したいという想いもあって。それで、採算とか、興業の盛り上がりとかを一旦、考えず、こういうツアーだったら一番良いのにね…ということを軸にしてやることにしました。制作とかを入れずにツアーを一本組むのは今回が初めてで、全部自分で電話をかけてブッキングしたんです。つまり、全てが自分達発信なんですよね。そういうところで思い入れがあるし、必ず良いツアーになると思うので、期待していて欲しいです。

アンディ:今度の主宰ツアーは行ったことのない場所にも行ったりするので、それが楽しみだなというのがまずあって。あとは、時期的に春ということで、みんな外に出たい気持ちになっている頃だと思うんですよ。なので、そういう欲求を抑えずにライブハウスに来てもらって、みんなで一緒に楽しい時間を過ごせると良いなと思います。

ワジョウ:ツアーは普通に楽しみです。ツアーが好きだし、かつ今回はコンセプチュアルな感じなので、より楽しみなところがあって。毎回、良いライブができる予感があるんですよね。だから、今は早くツアーに出たいという気持ちでいっぱいです。

ノヴ:リリース後のツアーで「KERBEROS」は良い曲が揃っているので、それを届けにいくことを楽しみにしています。また新しいギャロを見せることになるので、ぜひそれを味わって欲しいですね。来てくれた人達の期待を裏切らない自信もあります。

ジョジョ:地元のバンドと対バンするのも楽しみですけど、黒百合と影と一緒に廻れるのが本当に楽しみです。彼らは今年の8月から活動休止することが決まっていて、一緒に廻れるのは恐らく今回が最後になると思うから。元々僕は黒百合と影のギターとベースと仲が良くなったけど、ボーカルは彼も人見知りなので、会っても全然話したりすることがなくて。そこからスタートして、ちょっと喧嘩腰でツアーしたいなと思っていたんですよ。“なんだよ、あいつ”みたいな状態でやったほうが、絶対良いライブになるかなと思って。そう思っていた矢先にたまたま会う機会があって、仲良くなっちゃったんですよ(笑)。意外と良いヤツじゃん…みたいになってしまっているのが、不安要素になっています(笑)。僕は性格的に、友達になった時に、こいつのこと殺せるのかなと考えてしまうタイプなので。それでも、全員殺しにいきますけど。そういう気持ちで廻りたいと思っています。あとは、ツアー・タイトルの“GALLOLUDE”は“PRELUDE=序曲”とかけているんです。それを頭に入れておいてもらって、何の序曲だったのかが明らかになる時を楽しみにしていて欲しいです。

音楽ライター 村上孝之